「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ワンダーエッグ・プライオリティ 7~11話」 感想と考察と洞察のまとめと整理
なんか完結は6/29ということなので改めてまた1話から丁寧に咀嚼して言語化したい。とりあえず最終回目に見返した時の諸々は放出しておく。
ep.7 14歳の放課後
リカと「母親になれない一生女でいたい女」と彼女が形容する母親、千秋に焦点を当てた話。
自分のパパは誰なのかと問い詰めるリカに対して、千秋は「リカはママの娘」と返すのみ。それをリカは、ママは自分とパパが仲良くなって欲しくないと、自分は幸せになれなかったのにリカが幸せになるのが許せないと思っているのだと受け止める。
そう語るリカだったが、それをねいるは互いに憎み合っている「共依存」だと指摘する。
そして、今回のワンダーキラーとの戦い。宗教家とそれに家族ごと人生を狂わされ取り込まれた少女。
宗教家の導かれて「死の境地」へ委ねれば、悩むこともなくなり、自傷のような痛みなしに苦しみから逃れられると語る少女を前に、リカは「死の誘惑」に屈してしまいそうになり戦意喪失してしまう。
しかし、間一髪の所でリカはマンネンの子が親を守る擦り込みにより助かり、また親子の断ち切れない縁に気づく。 そして、共依存を指摘したねいるは「どこかで断ち切らないと…」と言ったが、リカの見つけた親子の絶対的な繋がりは親のいないねいるには理解し得ない特別なものだった。合理的で親のいない自分にとって、感情に流される親との関係がないことは良いことなのかと疑問を含んだようにどこか寂しげに呟くねいるの姿はそのことをより際立たせていた。
ワンダーキラーを倒したリカは自分は弱いから自傷して守りたいものを守れるようにバランスを取っていると話す。死の誘惑から逃げずに、守りたいものから目を反らさずに戦い続けるということはリカだけではなく、アイにも重ねられるように感じた。
そして、最後の千秋の「どうせリカも私のことを捨てるんでしょ」という問いかけに対するリカの「うん、でも今じゃない」という返答は、「別れたって子どもにとってパパはパパ」という以前のリカの呟きと表裏一体なもので感慨深かった。さらに、「大人って時々別の生き物に見える。大人って全然わっかんない!!」というリカの思いはリカが親子という存在に正面から向き合えず、親を1人の大人として理解しようとしていたことが生んだ誤答にも思えた。
ep.9 誰も知らない物語
ねいるは高IQの人々が所属するプラティメンバー同士の人工授精で生まれた子どもということが明かされる。
そして、ねいるの友人だった阿波野寿がエッグから孵る。臨死実験を経て死の快楽を得た彼女は、残した器としての身体を大人の好き勝手な利用から守って欲しいとねいるに託す。
いつもは理屈や合理を張っているねいるでも友達に対しては感情が先だってしまって、寿の生命維持装置を外すことができなかった。そんなねいるに対してアイが「2人ならファンタジー」と、友達は特別な存在だと言葉をかけ、ねいるの寿に対しては合理を通せない姿を受け止めて彼女に別れを告げる後押しをした。
一方でアカと裏アカはねいるの秘書の田辺美咲と「死の誘惑」について話し合う。アカと裏アカは少女が自殺する本当の原因を告げたらアイたちは戦わなくなると言うが、美咲は同じ少女として理解し立ち向かうと返す。
“今は酔うべき時です。時に虐げられる奴隷になりたくないなら、絶え間なくお酔いなさい。酒でも、詩でも、道徳でも、何でもお好きなもので。”
“大いに楽しみましょう、一度きりの人生を。”
ep.10 告白
アカと裏アカがジャパンプラティの創始者だとねいるが明かす。
学校を辞めると言う先生にアイは小糸ちゃんの死から逃げるわけじゃないのかと問う。そして、アイは沢木先生の個展へ招かれる。
アイはママのような髪型にママのヒールを履いて沢木先生の個展を訪れる。沢木先生の絵は大人になったアイ、つまりママを描いたものだった。そしてアイは強く、美しいママの娘だから君も自信を持っていいと言われる。
リアルではゲイに告白され、エッグの世界ではトランスジェンダー男性を救った桃恵はハルカを遂に救い出すことができた。しかし、ハイフンがその代償とばかりにワニックを惨殺し死肉を桃恵に食べさせる。まさしく死の恐怖を突き付けた。
ep.11 おとなのこども
リカも桃恵のように救済に辿り着いたがドットによりマンネンを殺され死肉を食べさせられた。
そして、アカと裏アカの回想。
彼らが作ったAIを宿す人工的な存在、フリル。2人は彼女を娘が如く愛して過ごした。しかし、アズサの存在が徐々に全てを狂わせる。2人に愛され、アカとの子どもを孕んだアズサはフリルの嫉妬の対象となり、果てに殺された。フリルは監禁されるも、アズサの娘のひまりもかつてのフリルのように2人に愛され成長していった。やがて裏アカに好意を持ちそれを告白した彼女は突如として自死した。
フリルは友達として自身の手で生み出したドットやハイフンという異形の存在を使い、ひまりや他の少女たちを死へと後押しした。
フリルを裏アカが殺した後も彼女の呪いが如き「死の誘惑」は少女の自殺を招いていた。それを止めるためにアカと裏アカはワンダーエッグを作り介入していた、と。
タナトスに対抗できるのはエロスの戦士のみ。
大人と子供。愛と死。友達。
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