「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ワンダーエッグ・プライオリティ 1-6話」の感想と考察と洞察のまとめと整理
ep.1 子供の領分
最初は友達なんていないと言っていたアイ、小糸の亡き跡だからそう言ったのかもしれないけれど、アイが小糸の存在と向き合うことから逃げていたようにも思える。無数のミテミヌフリに追い回される西城くるみをわが身愛おしさにただ「ごめん…」見送ってしまったこと、くるみの「親友は永遠」という言葉。これらがアイに小糸の過去を直視させたように感じた。
かつて自分が裏切った末に命を絶った小糸を今度こそ救うために大戸アイは「もう見て見ぬふりはしない、逃げずに戦う」と決めた。
しかし、ワンダーキラーを倒した後に消滅してしまったくるみに驚くアイに告げた「助かるのはお前だけ」という言葉は、まるでアイがまだ何かから目を背けていることを示唆しているようにも聞こえた。
小糸の彫像が流した涙も、あれは何の涙だったのだろうか。
それでもアイが恐れから目を反らさずに立ち向かうことを決意し一歩を踏みしめた回だった。
サブタイトルの「子供の領分」は見て見ぬふりという理がまかり通る学校みたいな子供社会の在り様を言っているように感じた。
ep.2 友達の条件
誰のために戦うのか。アイは小糸のためではなく嫌いな自分を変えるために戦っているんじゃないのかとねいるは辛辣に言い放つ。
ねいる自身は自分が死なせた妹のために戦っていると言うが…。
鈴原南のワンダーキラーに悉く返り討ちにされるアイを前に南は全部自分が悪い、自分のせいだと訴える。そう自責する南をアイは自分を見つけて欲しいかまってちゃんだと切り捨てる、だからこそほっとけないと。
回想でのアイは小糸が虐められることは自分のせいだと責めていた。小糸はアイは悪くない自分が転校生だから沢木先生に贔屓されていると思われてやきもちを焼かれているだけと言った。南の姿と重なるかつての自分をアイはどう考えているのだろう…。
そして、ワンダーキラーを倒した後にくるみと同様に「私のこと時々思い出してくれる?」と言い残して南は消えてしまった。
ep.3 裸のナイフ
リカの登場。ひきこもりのアイはリカに「かまちょなんでしょ、イケメンの先生に心配されたくて」と言われる。第2話でアイ自身が南にも言ったようなこの言葉も今思い返すと、この時には既にアイの沢木先生への想いは芽生えていたのかもしれない気もする。
回想での沢木先生の胸で泣く小糸に、アイは沢木先生に疑念を持ち始める。
そして、どうして友達なのに頼ってくれなかったのと小糸をどこかで恨んでいたと独白するアイ。
一緒に死んでくれてって頼まれたら私は…。その後にリカに「私も一緒にぶっ殺す」と続けたアイには今なら一緒に立ち向かってあげるだけの勇気と強さを感じた。だけど、どこかアイの小糸への嫉妬に見えなくもない複雑な感情が見え隠れしているような気もする。考え過ぎだろうか。
ep.4 カラフルガールズ
ワンダーキラーの「バカなガキはみんな大人の餌食さ」という言葉やおばさんと言われた彼女の「カラフルに生きたいねえ!!」という叫びは輝ける子どもたちと大人という対比の存在が意識される。
そして、ワンダーキラーに追い詰められるも、石化から脱したリカに窮地を救われるアイは共に戦うための存在な友達ということを再確認する。
アカとウラアカは男子と女子の自殺は意味合いが違うと話す。女は衝動的で他人の声に影響されやすいから、死の誘惑に惑わされやすいのだと。だからそういった誘惑に惑わされたことを後悔しているかもしれない子たちのためにこの世界があるのだと言った。
ep.5 笛を吹く少女
回想で明確になる小糸の先生への好意とアイへの嫉妬心。
ねいるの守ることになった少女は何にも代えられない少女が大人になる一瞬の若さの美しさを逃さないためにと自殺した。 だけど、ねいるは彼女の内心を見透かしたように本当は自殺したことを後悔してるんでしょと告げる。死んでしまったらもう誰も「きれい」とは言ってくれない。
桃恵は彼女が救いたい少女のハルカのことを語りだした。ボーイッシュだからと女子から男子に向けるような好意の視線を向けられる桃恵のことを唯一女の子として見てくれたハルカ、だが彼女も他の子と同様にも好意の視線を向けられた桃恵は恐怖からハルカを突き放してしまった。だけど、桃恵自身は相手が女子だとしてもモテることをまんざらでもない気持ちも事実。
つかの間の休息を終えた後、リカは今が最高に楽しいのにこれから戦うなんて必要ある?と言い出す。自殺した原因はあるかもしれないけれど死ぬなんて反則だし、そこまで責任を感じる必要ってあるの?と。死者を救うための命を懸けた戦いで自らが死んでしまったら、残された人の気持ちはどうなるのかと訴える。自殺者を生き返らせることは必ずしも正しいのかと迫る。
ねいるは自分を刺してそのまま飛び降りて死んだ妹がいると語り出し、その傷跡が今でも忘れるなと言いたげに疼くから戦うと言う。
亡き者を蘇らせるための命を賭した戦いに挑むことに迷い葛藤し始めた子どもたちを見て、アカとウラアカは「罪悪感やなぞなぞなんて忘れちまう、思春期なんてそんなもんさ」と呟く。
ep.6 パンチ・ドランクデー
ミテミヌフリは羨望と嫉妬を抱いてアンチへと変貌を遂げ、出る杭を打つ。
回想のアイの虐められる原因だったオッドアイを魅力的だと言う沢木先生。
そして、自分だけに死者や怨念が見える恐怖に苛まれてきた少女に寄り添うアイ。
アイの沢木先生に対して抱える想いの正体をねいるに恋心だと突き付けられたアイはそれを頑として認めようとしないが、突然吹っ切れたかのように学校にいる沢木先生の下へ駆けつける。そして、「学校に行きます」と嬉しそうな表情を浮かべて告げた。
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