「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「イヴの時間」─信じれば、無機質な身体に宿る愛も本物になる─ 感想と考察
Publish date: Dec 17, 2021
人間とアンドロイド。
存在の境界を越えて思いの通じ合う場所で、切なさと冷たさの裏に愛情を見つける物語。
アンドロイドが高度に発達した社会。
それは人間の潜在的な恐怖と忌避が、倫理の下に人とアンドロイドを分断する世界。
アンドロイドが人間に置き換わったりしないか、そもそも人が作り出して使役するモノが人を超えてしまうのではないか。人間には無機質な表情の下にどんな思考が詰まっているのか分からない。だから、人間がアンドロイドに送る目線は疑心暗鬼に満ちている。
でもそれって、本当に機械みたいに冷たいのは人の心じゃないの…?
だけど、アンドロイドの機体や命令に従えられた動作には人への想いが宿っている。彼らは家電なんかじゃなくって家族の一員。そして一緒に時を過ごせばアンドロイドにだって感情が芽生えてくる。
だから、アンドロイドからの一方通行な想いも、人が理解ろうとしてみれば伝わってくるはず。たとえ相手がどんな形をしていても、そこに想いが存在すると信じれば、彼らに宿る想いは彼らだけじゃなくて私たちにとっても本物になるはず。
冷たく扱われることがあってもマスターを健気に慕い続けるアンドロイドの姿はどこか痛ましく、それでいて愛してあげたい哀愁があった。だからこそ、無機質な機体にだって暖かさも愛も宿る、そう信じてみたくなる物語だった。
Tags: