「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ぼくたちのリメイク」─忘れていたのはキラめきと熱量─ 感想と考察
10年前に戻ってやり直す、熱を帯びて輝いていた頃
10年前にタイムスリップした恭也は、若かりし10年後プラチナ世代と呼ばれる憧れのクリエイターたちと共に夢への道を歩む。
だけど、夢の前にはたくさんの現実という試練が立ちはだかる。10年後の未来でのクリエイターの現場を知っている恭也は、時には妥協をしながらも壁を乗り越えていく。理想だけを追い求めていては、表現したもの作り上げたものを届けられないことだってあるから。本当に掴みたい理想のために小さな理想を諦めなければいけない現実もあると。
恭也のそのやり方は確かに幾度となく危機的な状況を覆すことができたけれど、同時に亜貴や奈々子、貫之の「大切なもの」を擦り減らすことになっていた。11年後のタイムスリップでは、完全に夢の潰えてしまった彼らの姿を見て、自分のしてきたことを恭也は取り返しがつかないことと責めるばかりだった。
その中で恭也はあることに気づく。彼らの作るための糧となる「大切なもの」の正体。情熱や熱量それこそが彼らを突き動かしていた。
失いたくないもの、キラめく情熱
大人になってから再び歩む青春だからこそ、社会という現実に飲み込まれていく大人たちが失ってしまいそうになる純粋な情熱や熱量の尊さが実感されて、何よりもキラめいて見える。
その熱量に浮かされて作ることは、楽しいことばかりじゃなくて、時に苦しみを伴うこともある。やりたいこととそれを阻む壁の間で葛藤し、その果てに掴んだ情熱は眩しくて、幾度となく涙が溢れてきた。
恭也は主人公だけれど、あくまで立ち位置はプラチナ世代のサポート役で彼の目から見える景色はある意味で何者でもなかったり、逆に何かを描いたり書いたり歌ったりする人であったりして色々な世界を見させられた。
理想や夢を最後まで突き通すことは実際にはなかなかできる訳ではないけれど、そこに向けて湧き上がってくる熱量を現実に歪められないように大切に守っていきたいと、恭也の辿ってきた道を振り返って強く感じた。
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