「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「魔法少女まどかマギカ」─誰かの希望を祈った少女たちの物語─ 感想と考察
誰かを気にかける余裕なんてなくて自分の幸せを願うことしかできない絶望の世界の中に、自分じゃない誰かの幸せを祈れるような希望が生まれる物語。
鹿目まどかは一人ぼっちだった暁美ほむらに手を差し伸べてくれた。暁美ほむらにとって鹿目まどかは、何も見えない暗闇の中で進むべき方向を指し示してくれる光だった。
魔法少女のキラキラした衣装の中に詰まっている絶望に飲み込まれてしまえば、少女は運命の歯車にすり潰されてしまう。祈りを絶望に冒された一人ぼっちな魔法少女たちにもう希望は残されていなかった。彼女たちに残された選択肢は、最後に唯一残った自分自身を守るために自分のことしか願うことだけだった。
だけど、暁美ほむらには目指すべき光〈まどか〉が見えていたから、最悪の結末が定められた運命を変えるために永遠の絶望の輪廻を繰り返すことができた。
それにほむらを形作るのは空っぽな自分に全てをくれたまどかだった。だから自身の一部ですらあるまどかを望むのは、ほむらにとって最初から最後まで唯一その手にあった選択肢だったのかもしれない。
そして、最悪の結末が定められたこの運命を書き換えたのは紛れもなく暁美ほむらの「愛」だった。
人間の感情は確かにインキュベータの言うように非合理かもしれない。人の想いがぶつかり合って、時に愛が憎しみや争いを引き起こすこともある。そんな人間の感情は正しくないかもしれないけど、だから生まれる希望もあるはず。
誰かを想う「愛」が叶わないだけでも切ないのに、それが絶望に転じてしまうなんて哀しすぎる。そんな時に迷える子羊たちが絶望に溺れてしまわないように円環の理〈まどか〉が遠いどこかにいると信じたい。書き換えられた世界で記憶も朧気な彼女を想って戦い続ける暁美ほむらのように私も希望を信じつづける限り、あの桜色の魔法少女が傍にいてくれる。
Don’t forget.
Always, somewhere, someone is fighting for you.
As long as you remember her, you’re not alone.
丁度再上映企画があったので、9話以降は劇場版総集編にあたる「永遠の物語」で見ました。
大スクリーンで世界観に没入できる体験も良かったし、何より総集編独自の構成の一つである挿入歌の使い所が素晴らしかったです。「コネクト」は暁美ほむらの歌だったんだということを一番強く感じられる。
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