Reviews
「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
この物語の
を、あなたと感じたい─-
「すずめの戸締まり」─人生という旅、道標─ 感想と考察
旅の道標、至るべき運命 扉の中の世界で幼いすずめが見た人が未来のすずめで、そのすずめがすずめに椅子を渡していたということに不思議な納得感が強く残った。それを最初は上手く言葉にできなかったけど、でも自分の人生の実感と重ねて振り返ってみると「そうだよなぁ…」と、すとんと腑に落ちるものがあった。 こうなり…
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会「SAO プログレッシブ 冥き夕闇のスケルツォ」─アスナとミト、別れと新たな道─ 感想と考察
燻る彼女への想い 第二章が始まって早々にアスナさんがレイピアをモンスター、そしてプレイヤーキラーに奪われる展開にSAOにトラブルは付きものだなぁと改めて思うばかりだったけれど、この「冥き夕闇のスケルツォ」を一度見た後にこの顛末を思い出すと、また違った印象を感じる。 このレイピアは元はミトから貰ったフ…
©2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project「秒速5センチメートル」をハッピーエンドに見る方法 感想と考察
初恋から覗く世界 初恋の記憶、それが「秒速5センチメートル」なんだと思う。 小さな手の届く範囲を世界の全てだと思っていた頃の初恋の記憶。それは巨大な世界、長く大きな人生の中で守り続けることは難しい。その想いを抱えた孤独な時の流れは怖くて苦しくて、ある時耐えきれなくなって、ふっと手放してしまう。そして…
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films「ルミナスウィッチーズ」─歌で、世界も想いも繋ぐ─ 感想と考察
「人と人との繋がりこそが力をくれる」ということを深く深く感じた。そして、1話から12話までのエピソードが一繋ぎに繋がった時、ルミナスウィッチーズたちの成長と旅路がいっそう輝きを放っていた。 同じ空の下、どこまでも越えて繋がる想い この物語は常に「遠い距離を越えて繋がる想い」を描いていた。特にセンチメ…
©2021 島田フミカネ・KADOKAWA/連盟空軍航空魔法音楽隊「僕愛・君愛」─僕/君がどこにいても想い続ける─ 感想と考察
ハヤカワ文庫原作らしく本格的なSFという印象が強く残ったロマンスだった。 特に「君愛」はSF世界の上で繰り広げられるロマンスで、「僕愛」はロマンスの描写も含めてSF世界を表現しているという印象だった。それぞれをSFとロマンスどちらなのかと言い切ってしまえば、「君愛」はロマンスで「僕愛」はSFだった。…
©2022「僕愛」「君愛」製作委員会「天気の子」─この世界からキミを守るもの─ 感想と考察
何かが欠けた街、東京 東京の街は、この世界は人の手によってあまりに人のものからかけ離れた姿になってしまった。 建物も、インフラも、そこに生きる人々も全てが効率と利益のために整然とならされてしまった都市という空間は、人に優しくない。人の生活のために目まぐるしく変貌を遂げ続ける街は、そうなればなるほどに…
©2019「天気の子」製作委員会「秒速5センチメートル」─刹那的で一度きりの甘い夢─ 感想と考察
認めたくない後味 見終わった直後、呆然あるいはショックを受けてる。二人はまた出会えるんじゃないかって思ってた。 でも、この感情こそが答えなのだと思う。人生は複雑で大きすぎて、その中でただ波のままに揺られて、流されることしかできない。いくらあの島へと願ったところで、海はそんなもの意に介せずに僕を運んで…
©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films「君の名は」─運命を紡ぐ結び《ムスビ》の意味─ 感想と考察
二人の運命 誰と繋がっているのか、どこと繋がっているのか、本当は夢や幻なんかじゃないかと思ってしまうくらいに覚束ない記憶。だけど、確かに繋がっていることを感じさせる「結び」がある。 ある日、三葉と瀧は遠く離れた世界を越えて、出会った。あり得ないほど遠い遠い世界を跨いで、溶け合うように交じ合った。 2…
©2016「君の名は。」製作委員会「夏へのトンネル、さよならの出口」─二人だけの未来─ 感想と考察
外と中で異なる時間の進み方をするウラシマトンネル。 これは過去に囚われた花城と塔野を永遠にその過去に閉じ込めるもののように見えていた。だけど、二人を結びつけもしたこのトンネルは、それぞれの捨てきれなかった過去と向き合わせ、そして未来へと送り出すための存在だったのかもしれない。 そして、その未来はただ…
Ⓒ2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会「雨を告げる漂流団地」─朽ちかけの思い出に焦がれる─ 感想と考察
団地というのはまさに文字通り、みんなが一緒に寄り添い合って共にある場所。 だけど、いつかは時の流れの中で朽ちていく。 航佑と夏芽がかつて一緒に暮らした団地もまたそんな風に過去の遺物となって取り壊されることになっていた。そんな団地に満ちていた古い部屋独特の落ち着く空気が、捨てられない思い出を抱えた夏芽…