「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」

「ルックバック」─描き続ける運命が振り返る─ 感想と考察
Publish date: Jun 29, 2024
京本
藤野の漫画に憧れて、藤野のおかげで部屋の外に出ることができて、世界が広がった。藤野を先生と仰いで、アシスタントを務め、彼女の力になるために美大で絵を極めようと道を進めた。
そういう意味で、最初は不登校の暇つぶしで書き始めた漫画に意味付けをしてくれたのが京本にとっての藤野だった。
藤野
一方で藤野も京本によって生かされている。小学四年生の学年新聞で京本の画力に圧倒され、その対抗心によって漫画に本気で向き合うようになった。そして、一度は筆を折りそうになるものの、ライバルだった京本からの羨望の眼差しによって、絵を描き続けた。
そういう意味で、藤野を漫画の道へ深く引きずり込んだのが京本だった。
収束の運命
でもだからこそ、二人は道を違えた。漫画の連載のために高卒でデビューする藤野も画力を磨くために美大へ進学するという京本も、共になんら軸はブレていない。二人が出会った時から、このタイミングで別れることは必然だったように思うのだ。
そして、山形美大の襲撃。亡き京本。IFの世界線。
結局、藤野が小学校卒業式の日に漫画を描かなくても、京本は漫画を書いて美大に進学していたし、そこでも藤野は色々ありつつも漫画を書き続けようとしていた。その意味で、やっぱり運命は変わらないように思う。
とはいえ、京本の存在が絶たれてしまったことは事実である。でも、だからといって、藤野が筆を折ることを京本は望まない。京本が私の背中を見ていてくれる限り、やっぱり藤野は漫画を描き続ける。
いずれにせよ、二人はどこまでも漫画を描き続ける。二人の運命はどこまでも重なり合って、変わらないのだ。
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