「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「EUREKA/エウレカセブン ハイエボリューション」─少女は愛を知り、母に、そして神になる─ 感想と考察
Publish date: Dec 2, 2021
これは家族を知らないたった一人だったエウレカが、同じエウレカであるアイリスと出会い、身を共にする中で親と子の愛に通じるものを知り、大切なものを得るまでの物語。
最初は愛情どころか愛想すら知らずアイリスの子どもの心を解することができなかったエウレカはもう見ていられないくらいだった。だけど、アイリスにとってエウレカは私たちが私たちだけが世界をも狂わせる力を持った存在で、ヒトではないと突き付けられた心を理解してあげられる唯一の存在という点で特別な絆を感じ、エウレカは子に対する愛を、アイリスは親に対する憧れを知っていく姿は慈愛に満ちていた。
だからこそ、ようやく知った大切な存在を失い守ることができなかったと失意に崩れるエウレカの姿は本当に悲痛だった。
グリーンアースの正体が明かされ、彼らの戦いのために、彼らの愛する人を守るために命を散らすのを前に、グリンアースの彼らを生んだ母/神であるエウレカが彼らを守るために自己を犠牲にする選択をしたのは必然であった。そして、散っていくエウレカを前に嘆くわけでもなく、彼女のように幸せのために呪われた力を使いたいと憧れるのも必然であった。
完結編となったEUREKAは、ハイエボリューション1のレントンとビームス夫妻の姿を通して描かれた胸を打つような親と子の愛と、ANEMONEで繰り広げられた圧倒的な世界観とこの世界でたった二人の特別な絆という魅力を併せ持ったものだった。
セカイ系SFには他に例があるのか疑問なくらい珍しいパロディネタや、作中世界の至るところの企業ロゴに製作委員会や制作に参加している企業名が使われている遊び心だったりもある意味でハイセンスさがあって楽しかった。
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