「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「TARI TARI」─どこまでもまっすぐで貴い、青春の全部が詰まった物語─ 感想と考察
この「TARITARI」、クソじゃないアニメ Advent Calendarに似合わず普通に非の打ちどころのない名作アニメです。まぁ文字通りクソじゃないアニメには変わらないのでOKですが。
ということで、クソじゃないアニメ Advent Calendar 2021の4日目です。
*** まず「TARI TARI」がどんなアニメかというと、江ノ島や湘南を舞台に繰り広げられる「合唱」をテーマにしたP.A.WORKSの青春シリーズの一作。そして自分が今年見た中で一番泣いたTVアニメ。青春めいっぱい
歌いたいけど、歌えない。主人公っぽいけど実は主人公じゃないらしい彼女の名前は宮本来夏。声楽部員だけどいつもやることは譜面めくり、歌わせてくれと頼めば顧問から「音楽の才能は無いから諦めなさい」と言われてしまう。それでも絶対に挫けることのない来夏は、だったら自分で合唱部を作ってやる!と決意する。
この来夏はまさにこの物語を象徴するようなキャラクターで、とにかく全力投球でどんな困難があっても諦めない。やけっぱちで体当たりなとこもあるけれど、後先考えなくていい青春のエネルギーをびんびん放っていて、見てる側にも何か力を与えてくれるくらい何にでも精一杯な女の子。
そして、次第に来夏のもとに彼女とどこか似た「やりたい!」を胸の内に持っているけれど、そこに葛藤や障壁も抱えている4人が集う。彼らはそれぞれの夢や目標に一歩踏み出せない気持ちや、両親に対して素直になれない反抗期の心内、夢を阻む現実を前に投げやりになってしまう想いに一緒に全力でぶつかったり、時に優しく寄り添ってあげたりしながら成長し、乗り越えて青春していく。
彼らの可能性溢れる思春期に特有の恐れ知らずのパワーや、一方で大人のような視界の広さも物わかりのよさもない傷つきやすい心も、すべてが青春の輝きと瑞々しさに満ちていて、本当に胸がいっぱいになって号泣しっぱなし…。
特に好きなエピソードが、序盤こそサブキャラな主人公の和奏と亡き母に焦点を当てた第5話と第6話。5話の母への反抗期の後悔を引きずる和奏には切なさと寂しさが目一杯につのり、そして6話で母の残した娘への愛を知るともう色んな感情がこみ上げてきて、胸も詰まるくらいの感動回。というか実際、嗚咽で半分息を詰まらせながら涙ぼろぼろ流してしまう。
とにかく、多感な思春期の強さも弱さも情感たっぷりに描いたこの作品は青春の全部が詰まっていて、次第に頑固だった大人たちも彼らの思いに動かされていく描写には心を打たれるものがある。そして、時折毒のあるボケやツッコミを交えたキャラクターの掛け合いもとてもお気に入り。こいつら悪ノリにも全力すぎる。
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