「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「シュヴァルツェスマーケン」─絶望の闇、歪んだ現実、そして希望の道─ 感想と考察
Publish date: Nov 1, 2021
BETA、西側諸国加えて国内にも対立を抱え、秘密警察〈シュタージ〉の監視下で家族すら信じられない絶望の東ドイツを舞台とした物語。それぞれの信念や思惑、互いの正義が交錯する暗闇の中で一筋の希望を追い続けるダークファンタジー戦記。
マヴラヴオルタネイティブのスピンオフ作品らしく唐突な凄惨で衝撃的な展開がいくつも待ち受けている。一方で、主人公たちの主たる敵にはBETAではなく秘密警察が置かれ、政治闘争の駆け引きや人対人の戦術機戦をメインとした戦記としてもとてもおもしろかった。そして、あまりにも暗く残酷なダークな展開は時に涙を流すほど悲痛であり、またその世界観の中で語られる希望を見出すストーリーはひどく感動的であった。
歪んだ世界に運命を別たれた兄妹
アイリスディーナやカティアと誓った東ドイツの希望の未来の灯火を絶やさないために、妹に手を下さざるを得ないテオドールの心中。
そして、全てを捨ててでもただお兄ちゃんと一緒にいたいという願いのため自分のやり方で兄を救おうと孤独に戦った果てに兄に銃口を向けられるリィズの胸中。
相容れない二人の想いはただでさえそれだけでも悲痛な程に胸を刺すものであると共に、二人の運命を別つ冷戦やシュタージを含む東ドイツという国の在り方を思い遣れば、なお一層広い世界の中でたった二人の兄妹の幸せすら叶えてあげられない運命の歯車を呪うような悲嘆が込み上げてくる。
道は続く〈Der Weg geht weiter〉
アイリスディーナの死は胸を穿つような結末であったが、彼女の意志を継ぐテオドールやカティアたち666中隊や東ドイツ国民の道は続いていく。
流した血と涙は溢れんばかりであるが、今はそれを希望の灯火を守り抜いた彼らの勇姿を称える歓喜の涙に変えて、平和と幸せの道へと進もうとする彼らを見送りたい。
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