「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ささやくように恋を唄う 3巻」感想と考察
Publish date: Sep 14, 2020
1巻から始まって、2巻を経て、遂に3巻でひまりと依のすれ違っていた一目惚れが叶ったことにとにかくほっとした。特にひまりからの恋愛感情のなかった一目惚れを向けられていた依の心境を思うと、ひまりが好きになろうとしてくれることは分かっていながらも気が気でなかっただろうと思うし、依の心が擦り切れるような日々が報われたことと2人の恋仲の成就は嬉しかった。
その一方で、依を想いながらも彼女の恋を応援してあげたくもある亜季という存在がいることで純粋に依とひまりの恋を応援できなくもあり、その葛藤は物語をいっそう切なくもおもしろいものにしていた。亜季の言動や態度の数々、特に2巻最後や3巻冒頭の亜季のひまりへの宣戦布告は彼女の幸せになって欲しい想いが詰まっていて、依のことが好きな以上に依に幸せになって欲しい亜季の想いがひしひし伝わってきたし、決して依には見せずに心の内にしまい込んだ依への恋心とひまりへの嫉妬心やその間にある彼女の辛さや苦しみは想像に堪えないほど切なかった。ただでさえ依とひまりのちぐはぐな想いの兼ね備える切なさにさらに重ねられる亜季の切なさには読み手のこちら側の心まで締め付けられるようだった。
そして、今巻の最後では依の前任ボーカルだった元SSGIRLSの志帆が登場したが、彼女の口にした亜季への想いはこれから彼女がただでさえ三角な関係をどう拗らせていくのか楽しみなものにさせてくれつつも、その渦中になりそうな亜季のことを思うと辛くもあるし、彼女とバンドを組んでいる百々花先輩とひまりの関係がどうなってしまうのかなど、4巻へ向けて期待が募る3巻でした。
Tags: