「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「劇場版レヴュースタァライト」─ワイドスクリーン・バロックの意味─ 感想と考察
舞台少女たちを観劇するつもりで劇場に行ったら、自分も舞台に引っ張り出されていた。
圧倒的でエキセントリック、ゾクゾクさせるような映像の上に描かれた、空高くキラめく星を掴もうとする少女たちの過去の自分と決別し新しく生まれ変わる物語。
東京タワーを上り詰めた少女たちは、次はスカイツリーを目指すのである
とある少女が死んでいた。
舞台の上を舞い、友との約束を果たした彼女の道はそこで途切れていた。
仲間たちは進むべき道と残した未練の間で葛藤し、もがきながらも茨の中に己がだけの道を切り開いていた。
愛城華恋は闇の中を舞っていた
華恋はひかりに導かれたスタァライトの舞台の上でひかりのことしか見えていなかった。舞台の前には観客がいて、舞台少女は彼らに望まれている事実とその熱気に気づけないでいた。
だからスタァライトを演じ切ってしまい再び立ち上がらせる燃料が尽きた華恋は、ただ舞台少女として死にゆく運命に飲まれるだけになってしまった。
客席の熱、舞台の引力
12年前のあの日、神楽ひかりは舞台上のキラめきに魅せられるも届かないと諦観しかけていた。始まりにして死んでいたひかりの手を引いて舞台少女としての命を吹き込んでくれたこと。そして、華恋のあまりの輝きに照らされて自分が舞台を降りた一ファンになってしまいそうだったことへの恐れを。
今まで華恋こそがひかりにとっての舞台を演じる原動力であったことと同時に、演じ続けるために華恋を遠ざけねばならなかったこと打ち明けた。
華恋の再び立ち上がる姿を望むひかりとこのクライマックスに魅せられた「私たち」の想いが燃えたぎる今、華恋の魂に再び火が灯る。華恋を乗せた列車は想いの業火に焼かれフルスロットルで駆ける。
アタシ再生産
そして、生まれ変わった華恋の心には、「貫きなさいよ、あんたのキラめき!」という言葉に「私もひかりに負けたくない!」と力強く返せる程に熱い情熱の炎が揺らめいていた。
でも、ここが舞台の終幕ではない。
ここが終着駅ではない。列車は必ず次の駅へ。
最後のレヴューでキラめきを燃やし尽くして再び空っぽになってしまった華恋は新たな燃料を求めて、さらに「私たち」をスタァライトしてくれるために次なる舞台を探し求める。
「本日、今この時」
この2時間、舞台少女たちの燦爛たる姿に陶酔し最高に心を熱くさせられた「私たち」の中にも彼女たちへの憧れにも似た一つの熱い気持ちが宿っていた。
そして「本日、今この時」オーディションを受ける華恋の姿には、彼女に魅せられ灯ったこの火を燃え上がらせるために、それまで観客にすぎなかった「私たち」の何かに挑戦しようとそれぞれの目指す舞台に上がろうとする姿を錯覚した。
列車は必ず次の駅へ、舞台少女は次の舞台へ
では「私たち」観客は?
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