「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「水の都の護神 ラティアスとラティオス」─この水の都と生きていく─ 感想と考察
Publish date: Aug 18, 2022
人の姿に化けてサトシと遊びたがるラティアスが本当に人懐っこくて、どこまでも愛おしい。彼女に感じるこの気持ちは、人に対する愛と同じかそれ以上のものだと言い張れる。
人と水が共に生きる街
「こころのしずく」から湧き出す水に揺蕩われた水の都・アルトマーレ、この街をかつて危機から護ったという伝説と共に語り継がれるラティアスとラティオス。人の言葉を話せなくても、彼らとは自然に分かり合える。そして、超常的で神秘的な力を持つ彼らと仲良くなれてしまえば、初めは畏怖していてもすぐに友だちになれてしまう。水の都の護神でさえ遠い存在ではなく、共に生きる隣人になのだと実感できる。
しかし、そんな存在を悪用しようとするやつはいつだってどこにだっている。そうして、「こころのしずく」は悪意に穢され、街を穏やかに満たしていた水が荒々しく牙を剥く。
されど、伝説は繰り返す。ラティオスがその身を以て街を襲う波を鎮める。人が触れてはならない自然を穢したことで、引き起こされた災厄を止めたのもまた自然なのだ。そして、空へ光となって消えたラティオスが「ゆめうつし」で見せたのは、青く美しい惑星の姿。
水の都のラティアスとラティオスとの不思議な物語。それが語ったのは、自然の営みとは決して人が飼い慣らすものではなく、共に生きる友だち、そして、時に私たちを包み込んで護ってくれるもので、私たちはその胸の中で揺蕩いながら生きていくのだ。
そして、ラティオスという兄を失ったラティアスの切なくて寂しい姿は、人間の兄妹と何も変わらない。そして、別れ際にサトシたちを追いかけてくる姿も人と人の絆と同じ。同じ地球に生きる生命同士、優劣もなくお互いに愛しあっていたいと思わずにはいられないのだ。
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