「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ペンギン・ハイウェイ」─少年が大人になる夏─ 感想と考察
Publish date: Sep 8, 2022
お姉さんがいた。
そのお姉さんは少年にとっての憧れ。だけど、お姉さんは大人で、少年は子ども。
だけど、愛の力はそんな壁なんてものともしない。少年は精いっぱい背伸びする。賢くなってえらくなる。それが「大人」だから。
そんな風に少年が必死に健気にお姉さんを追いかけて、できる限りの背伸びをしてお姉さんに見合うような賢い大人らしく振舞おうとするのが、このフィルムが描いたことだと私の目には映った。
しかし、夏の終わりが告げられる。物語の最後でそのお姉さんは少年の前から姿を消してしまう。あれだけの大冒険をして、お姉さんを追いかけ続けて、時にはお姉さんを守ろうと大人の男としての姿を見せたこともあった。だけど、夏休みが8月31日に終わってしまうのと同じように、無情な現実が少年の目の前に立ち塞がった。
でも、それは少年が大人に近づいた証でもある。少年は賢いからみんなよりも早く現実というものに気付いてしまう。それはサンタクロースが実在しないと知った時のようなもの。
だけど、現実があるから人は夢を見るのだ。お姉さんを追いかけた夢を幻想と知った少年はさらなる夢を見る。裏切られた幻想を現実にするための夢を見る。そして、その夢に向かって少年の旅は再び始まる。その旅路がペンギン・ハイウェイ。いつかまたお姉さんに会える日まで、その道は永遠に世界の果てまで続いていく。
少年にとってお姉さんは世界の全て。お姉さんを中心に世界は回っていた。だからこそ、お姉さんがいなくなって心にぽっかり空いた穴も、お姉さんに会いたいと思う想いと行動が埋めていくのだ。なぜならお姉さんの正体は世界の修復者なのだから。
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