「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ミモザの告白 1巻」─みんな正しいのに、全てが間違ってしまった─ 感想と考察
Publish date: Sep 22, 2021
男だけど女の子になりたくて、そして主人公のことが好きな幼馴染。女の子になってしまった彼(女)のことが好きな、主人公の好きな女の子。
この二人に挟まれながら、他人や自分自身と価値観や人間関係を削り合う主人公咲馬の、葛藤と感情の鮮烈な火花の散るヒューマンドラマ。
咲馬はきっと自分という偏見を通してしか人を推し量れなくて、それで道を誤ってしまったように見えるけど、同時に自分に正直でもあったように思えた。停滞した田舎に満ちた偏見を嫌いながら、自らの偏見に気づけない咲馬は正しくはないのかもしれないけど、美しかったし誠実だった。
客観的な視点を介入させて汐やあるいは夏希を切り捨てれば咲馬はここまで傷つくことはなかったと思う。だけど、すっごい不器用だけど彼は彼なりの正しさを貫いていたように思う。
そして、何も諦めたくないと咲馬の中の主観と主観がぶつかり合った結果、最後に全てを失いそうになっている場面には哀しさと脱力感があった。
だって誰もが正しいのに、導き出された結果は間違ってしまってるから。
自分は日頃から想像し得るどんな人間も存在するという心構えを持っているけれど、作中での咲馬を体験を見ているときっと自分の心構えをあっさりと越えるような人と出会うこともきっとあって、そういう時に自分はどう向き合うのかな、人間って人間関係って難しいなぁと思わされた。
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