「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ラブライブ!虹ヶ咲2期」─ステージの上にあなたを連れて行くトキメキ─ 感想と考察
自分が主役になるなんて考えたこともなかった。そんなあなたがトキメキに魅せられて、輝くそれに手を伸ばしてもいいんだよと勇気と情熱をくれる。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の物語の後半を表すには、まさにそんな言葉がぴったりだと思う。
そして、彼女たちの生き様に胸を打ち震わされて流した涙の向こうには七色の光が見えていた。
一番近くでそのトキメキを見ていたのは、
── 1人じゃ見つけられなかった景色に、みんなと一緒だから出会えたというQU4RTZの4人の背中。
── スクールアイドルとして愛に頑張って欲しい、だけどそれは自分にはできなかったことだと真っ直ぐに見つめられない。そんな自分が惨めで嫌いな愛のお姉さんの気持ち。その曇りを吹き飛ばすだけでなく、自分のスクールアイドルの原点はかつてのお姉さんにあったんだよ!と再びチャレンジする意味を与えた愛さんのエネルギー。
── 2つの「大好き」の間でどちらかを選ばなきゃいけない、だったら第3の「大好き」で2つ共叶えちゃえ!という生徒会長でスクールアイドルなせつ菜の情熱。
── 最初は他人をなぞるだけでも、いつしかそれがきっかけになって自分だけのやり方に繋がるんだって、即興劇を通してA・ZU・NAの3人が示してくれた道。
── 大好きを叶えようとすることは失敗したら…と思うと怖くなってしまうけど、自分の気持ちに言い訳し続けることもつらくて苦しい。そんなウラオモテな大好きをみんなが応援してくれたから、一歩踏み出して輝けた栞子の姿。
── 諦めかけた夢に対して、同好会でもう一度チャレンジする決意を固めた嵐珠とミアの覚悟の表情。
そんな虹ヶ咲のスクールアイドルたちの大好きや夢に対して、どこまでも真っ直ぐで全力な姿を一番近くで見続けてきたのは、マネージャーの侑だった。マネージャーとしての侑の原点、それは自分をめいいっぱい伝えるスクールアイドルに感じたトキメキで、そんなトキメキを放つスクールアイドルをもっと近くで応援したい!そして、侑は作曲という道を歩み出して、徐々に自らもトキメキも作る側に立ち始めた。
そんな「好き」を突き詰めた先に生まれる「ユメ」。その果てにスクールアイドルもそのファンにもトキメキを届ける曲が生まれた。自分が受け取ったトキメキに感謝と声援を与える想いと、このトキメキをみんなでもっと共有したいという想いを体現しつづける侑の生き様には胸をアツくさせられっぱなしだった。
重なるのはあなたの姿
何かを応援する人の多くが一度は自分も主役になりたいと夢見たことがあると思う。だけど、きっと「自分なんか…」と躊躇してしまうこともまた多いと思う。そうやってユメの芽に目を瞑って、私がやることは応援!とどこか自分に言い聞かせるようにしてしまう。侑ちゃんもそんな一人とは思わないけれど、それでもトキメキに目を眩ませられてしまった、どこにでもいる何かのファンの一人のように彼女の姿が映った。
だけど、この七色の物語は何かを応援したい気持ちも肯定してくれて、そしてそこからなりたい自分になることも後押ししてくれた。何色でもどんな人も輝ける!どんな夢も一緒になって応援してくれる!そして「次は、あなたの番!」という言葉に湧き上がるのは、自分もこのトキメキをカタチにしたいということ。侑ちゃんが自分たちの投影であったならば、今は自分たちが侑ちゃんに照らされて浮かび上がった影。自分だって誰かを照らす光になりたい、無限に広がる空に架かる虹の一つになりたいと思わずにはいられない。
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