「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「Just Because!」─青春を終わらせない、再会の恋物語─ 感想と考察 10~12話
この物語は、最高の青春の終わりと再開、もとい再会。
『Just Because』
だからといって青春は終わらない。再開して再会し続ける、そんな物語。
第10話「Childhood’s end」
バレンタインデイ・ビターエンド
今日はバレンタインの2月14日、誰しも想いを伝えられずにはいられない。それは美緒も恵那もだった。
だけど、瑛太にチョコレートを渡そうと美緒の目に入ったのは、スマートフォンのホーム画面に映った恵那の写真。そんなものを見たら、もう美緒は何も言えなくて…。そして、逃げ出すように駆け出した先、涙を零しながら、「私、完璧本気じゃん」と呟いた言葉は、恋の痛みと共に知る自分の想いの実感。それはただただ切ないビター味だった。
一方で、その一幕を陰から見ていた恵那の贖罪。ホーム画面の設定の仕方が分からない瑛太に代わって、写真を戻す。そして、「ごめんなさい…」と残した言葉は、きっと瑛太が好きだからこその精いっぱいの言葉だったのだと思う。
そんな風にして終わった今年のバレンタイン。特に美緒にとっては、こんなイベントに本気になれる18歳、最後のバレンタインが終わってしまった。そして、それは間違いなく一つの青春の終わりを告げるシーンだった。
青春ハイライト
一方で、陽斗を呼び出した葉月。いつものグラウンドで応援歌をトランペットで演奏しながら、陽斗はホームランを再現する。それはまさしく彼らが過ごしてきた青春のハイライトだった。
そして、ようやく葉月が告げる告白の返答は、「ごめんなさい」というものだった。そして、「4月には兵庫に引っ越すから…。私は大学生になって、相馬くんは社会人になって、春からお互い新しい環境になるんだよ!」と葉月は言い放ち、陽斗は悲嘆に暮れる。それは青春との決別だった。「そんなの続くわけない」と。
でも、葉月が続けて紡ぐ言葉は、「だから、大学での生活が落ち着くまで待ってほしい。その時、相馬くんがいいなら、私とお付き合いしてください」というもの。それは青春の一時休止で、青春はまだ未完のままということ。結局、諦められない。それが青春なのだということを示していた。
青春の延長戦
そんな青春を終わらせられないことと呼応するように、恵那は再び瑛太を呼び出す。そして、ついでのチョコレートと共に渡すのはいっぱいの合格祈願のお守り。それが恵那なりの告白なのだと思う。「やっぱり瑛太先輩のことが好き」と言いながらも、だからこそ瑛太に美緒と上手くいって欲しい。
そして、そんなちぐはぐだけど、それだけ自分に嘘をつけない純粋なとこが恵那の魅力であり、瑛太もそんなところにどこか惹かれる気持ちがあるのだと思う。「小宮の頑張ってることも報われて欲しいじゃん」という言葉も、まさにその気持ちを映したもののように聞こえていた。
だけど、そんな風に辻褄が合いつつある裏で、美緒だけが一人、渡せなかったチョコレートを自分で食べている姿が切なくて、胸の内で切ない涙が溢れてしまいそうだった。
第11話「Roundabout」
美緒と瑛太、噛み合わない想い乃巡り合わせ。
二人ともお互いを「好きだ」って想っているのに、その果てに選ぶ進路だけが行き違ってしまっている。それは、美緒と瑛太が共に、相手が自分のことも好きだと思っていないと思い込んでいるからこそであり、そんな鈍感さの表象として、志望校のズレというのが映し出されているように思う。
そして、そんな行き違いを生み出しているのは、青春らしさ。二人とも自分の想いを決定的に相手に伝えよう!と思ってはいる。でも、それは「合格したら言おう」というもので、あまりに遅すぎるのだ。それが青春。二人とも臆病がって、意地を張って…、そんな子どもっぽい行き違いなのだ。
だから、相手の想いに気付けないというよりも、気付こうとしていないというのが、実は正しいのかもしれない。好き合っていてもそうでなくても、決定的な真実を知ってしまうことが怖くて、美緒は瑛太の、瑛太は美緒の思いを聞き出せないし、聞くこともできない。
そして、臨む試験の本番と、その終わり。
美緒の結果は合格で、そして……。
第12話「Get set, go!」
そこに、瑛太の合格を意味する3616の受験番号はなかった。
青春の幕引き
そして、迎える卒業式。それはこの高校からだけではなく、青春からの卒業も告げるものだった。だから、合格を携えた美緒も瑛太の下へと、彼を探す。
一方で、瑛太は美緒の下ではなく、恵那の下を訪れていた。そして、もう一つの約束。恵那の写真コンクールの結果は見事に金賞だった。この結果、存続の危機にあった写真部の青春はまだ続くこととなった。だけど、実際に賞を取った写真というのは、当初の恵那の撮った瑛太の写真ではなくて、瑛太たちを撮る恵那の写真だった。でも、それはそれこそが恵那の青春の継続を意味しているものとして映っていた。
そんな中で、恵那から瑛太に贈られたのは特製の卒業祝い。瑛太のための卒業アルバムは、この冬に唐突に始まった青春のひとときを詰め込んだ惜別だった。そして、それに応えるように、瑛太から恵那への告白の返答。
「好きって言ってくれたのは嬉しかった。けど、ごめん……。俺、ずっと前から好きな人がいる」と。そして、返す恵那の言葉は「知ってる」と。「そういう先輩を好きになったんじゃん」という失恋の言葉は一つの青春の終わりであり、彼女の涙は新たな青春の続きの始まりを描いていた。
そうして、瑛太は一つ、また一つと青春の幕を下ろしていく。恵那への返答の次は、陽斗との1打席勝負のリベンジと。
だけど、それでも下ろせない幕が一つあった。卒業式の後、瑛太を探して待ち続けた美緒の下に、結局瑛太は現れなかった。
新たな青春の再開、再会
そして、冬が終わり、春が訪れる。
互いに違う進路を歩むはずだった二人。それは中学生のあの頃も、大学へ進学した今もそうだった。
だけど、あの冬の日のように、また君と巡り合ってしまう。掛け違えた運命がまた重なる。あの日、終わらせることのできなかった青春が、また再開する、もとい再会する。
違う大学へ進学したと思っていた美緒と瑛太は、同じ大学へ進学していたと偶然に出会した。そして、その時になって、ようやくそのことに気付けたというのは、なんとも笑えるような泣けるような結末だった。
「俺、夏目のことが好きだ」「私も」
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