「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ジョゼと虎と魚たち」を薦める感想と考察
この記事はクソじゃないアニメ Advent Calendar 2020の参加記事です。
この記事のアドベントカレンダー担当日である12月25日劇場公開の『ジョゼと虎と魚たち』の紹介記事です。試写会で鑑賞済みなので感想も織り交ぜつつ、ストーリーの核心的なネタバレは避けながら予告PVに少し言い足したくらいに内容に触れながら色々言っていきます。
クソじゃないアニメ Advent Calendar 2020 - Adventar
自分は好きなアニメなのに、誰も話してない......円盤の売り上げが......一部からめっちゃ叩かれとる...... そんな不遇なアニメを紹介してあわよくば視聴者を増やそう!という企画です。 どなたでもお気軽にご参加ください。 今年で3年目!お世話になっております。よろしくお願いします。私はネタ切れです。 2019: https://adventar.org/calendars/3982 ...
あらすじ
夢を追いかけながらバイトに明け暮れる大学生の恒夫は、車椅子で危うく坂道を転げ落ちそうになったジョゼを助けたことから、“ジョゼの相手をする”という不思議なバイトを引き受けることに。ひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、恒夫もジョゼに真っすぐぶつかっていくなかで、見え隠れするそれぞれの心の内。しだいにふたりの距離は縮まっていき、ジョゼは夢見ていた外の世界へ恒夫とともに飛びだすことを決める。
自由の翼を失った人魚姫
生まれつき足の不自由なジョゼと、ある夢への憧れを抱く恒夫。
私たちは毎日のように自らの足で広い世界へなんでもないことのように繰り出しているが、車椅子に縛り付けられたジョゼにとっては一大冒険であり、憧れだった。
そんな彼女にとっての日々の世界とは自分の家や部屋という小さな空間に収まってしまうもので、自ずと心までも自分の殻に閉じ込められてしまっていた。
そして、憧れと現実の間で歪んだジョゼの心は、手に入らない恐怖に怯えて憧れに手を伸ばすことから背を向けてしまう。
そんな彼女が恒夫と共にいかに憧れに向き合うのか、もがきながらも歩みを進めて挫折と壁を乗り越えていく、心震わせられる眩しい物語。
この夏は一度きりしか来ない
本作は恋愛譚という側面もあるだろうが、それ以上に夢を追い求めるというテーマが主軸にある。
ジョゼと恒夫の2人の姿には、途方もない夢を前にしてさえも走り続ける活気をくれる力を感じた。
そして、20代という最後の青春を駆け抜ける彼らを前に、何かしたい、成し遂げたいという思いが触発された。
聲の形との共通項
また、障害を抱えるヒロインという繋がりで『聲の形』を感じる部分もあった。
届かない憧れを拗らせたジョゼのわがままさは良くも悪くも障害者がただ可哀そうな存在一辺倒ではない普通の人だと感じさせられた。
また、核心的なネタバレになるので多くは語らないが物語の転換点となる場面ではまさに聲の形のことが思い起こされた。
本作と聲の形は根幹にあるものは異なるものの、ある部分で障害者の描写の仕方に共通項が見られ、ジョゼ虎はいわば暗鬱とした痛々しさを取り除きより前向きにしたような『聲の形』のように思えた。
見える世界の広さ
そして、足が不自由なことで世界が大きく狭められてしまう、それも他人や環境によってという視点をこの作品を見て強く実感させられた。
駅の無人化により電車の車椅子での利用者の移動がより制限されてしまっているというニュースや、車椅子での電車の利用は降車駅を事前に指定しなければならないために気ままに下車することができないということを最近聞いたばかりだったために、この事実はとても印象に残った。
駅無人化で「新たな負担」 車いすの3人がJR九州提訴:朝日新聞デジタル
: https://www.asahi.com/articles/ASN9R7445N9RTPJB00D.html ...
おわりに
『ジョゼと虎と魚たち』はこのクソじゃないアニメ Advent Calendar 2020のこの記事の担当日である本日より劇場公開されています。
おもしろさは保証するので、ぜひ気になった方は見に行ってみてください。
Tags: