「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」

【新卒・エンタメ就活】アニメ・映画業界の内定をもらうには、ライセンス営業を知ろう!
この記事では、新卒でアニメ及び映画の製作会社に就職した立場から、新卒就活で業界を志望するにあたって知っておいた方が良いことを紹介していきます。特に新卒が配属されがちなライセンス営業について、深く解説していきます。なお、私がアニメビジネスへの興味が深く、業界的にもアニメビジネスに勢いがあるという点から、実写よりもアニメへの言及が多くなります。
自己紹介
私
アニメが好きで、アニメに24時間365日関わりたいと思ってアニメメーカーを志望し、2024年にとある業界の会社入社。志望職種は宣伝及びプロデューサーですが、とにかく業界に入ることが最優先でした。志望していた業界はアニメ製作に関わる会社として映画会社、レコード会社、TV局、製作機能のある大手アニメスタジオなど。
隣接業界として出版社や広告代理店なども受けていました。アニメ系のグッズ会社はあまりやりたいことができないと思い、スルーしていました。
会社
新卒で主にアニメ・映画を製作する会社に就職。そもそも製作会社とは、作品を企画プロデュース、宣伝、ライセンス営業を行う会社であり、カメラを担いで映画を撮影したり、アニメの原画を描いたりする現場のクリエイターの制作会社とは全く異なるものです。
具体的な製作会社は、映画でいえば、東宝、東映、松竹、GAGA、日活など。アニメではアニプレックス、KADOKAWA、ブシロード、キングレコード、ポニーキャニオンなど。また、アニメでは制作会社でありつつ製作会社でもある、バンダイナムコフィルムワークス(サンライズ)、トムス・エンタテイメント、MAPPA、ぴえろなどもあります。
大手か中小か
弊社は業界では中堅です。そのため、新卒でも色々なチャンスが回ってくる点は大きなメリットかと思われます。私の場合はアニメに詳しいところを買ってもらって、色々と意見を求められることも多いです。色々と話を聞く限りでは、業界大手ではなかなかこうはいかないようです。
逆に業界大手の場合は、潤沢な予算や会社としての力があるので、ビックタイトルに関わることができるなどのメリットがあります。ただし社内で成り上がるのも大変なようです。この業界では転職は日常茶飯事なので、とりあえず業界にさえ入ってしまえば、働く会社については後からどうとでもなるのかなと思います。
学歴
経歴としては国立大学の国際系学部卒。エンタメとは全く関係なく、テレビ局の面接では「アニメをやりたい」と言っているのにも関わらず、学部のせいで「国際報道とかは興味ないの?」と聞かれる始末でした。弊社に新卒入社した人たちの学歴は、MARCHがボリューム層ですが、偏差値50をやや下回る私大出身の人もいます。逆に上は旧帝、早慶、海外大卒もいます。
学部についてもメディア系学部出身の人もいれば、全然関係ない学部出身の人もいます。会社の採用方針にもよると思いますが、MARCH・関関同立あれば学歴面では十分ですし、それ未満でもチャンスはあると思います。エンタメ業界は他業界と比較して、学歴はあまり重視してないような印象もあります。
留学経験
また、この業界は海外販売を強化する風向きが強いということもあり、留学経験は歓迎されると思います。私自身留学経験はないですが、先輩に1年間の留学経験があったり、海外の大学を卒業したりしている人がいて、彼らは初配属や異動で海外販売の部署に配属されています。本格的な留学経験や確かな外国語運用能力があれば、そこを武器として海外系の事業部を志望するのも良いと思います。日本の作品を外国に送り出そうという需要が高いのに比例して、外国語人材の需要も高いです。
ただし、洋画人気の低下に伴い、海外作品を輸入する「海外調達」の需要は昨今低いので、そこだけは注意です。また、逆に言えば、外国語運用能力がない人が、海外系の事業部を志望するのは悪手です。会社説明会などでは「スキルがなくてもチャンスはありますよ~」などと言うかもしれませんが、実際はそんなことありません。
ライセンス営業について
なぜライセンス営業を知っておくべきか
新卒就活で映画・アニメ製作会社を志望するなら、ライセンス営業について知っておくことは大きな強みとなるはずです。
なぜならば、冒頭でも述べたように、新卒の初配属先がライセンス営業となる可能性が高いからです。業界未経験でも担当できる仕事であり、商流を理解する基本にもなる点で営業の部署をまず経験させるというのは、社員の育成方針としても順当かと思われます。営業という点では配給営業・劇場営業という職種もありますが、そちらは私自身が詳しくないため、後ほど知っている範囲で軽く述べる程度にしたいと思います。
ライセンス営業とは
ライセンス営業とは、作品の配信権、放送権、商品化権(グッズ化権)などの作品の二次利用を行う権利を営業する仕事のことです。配信権(正しくは公衆送信権)であれば、主に「この作品を御社の配信サイトで配信しませんか?」という営業活動及び、「御社で配信して良い代わりに○○円払ってくださいね」という金額交渉を行います。
配信であれば、他にも映像や画像などの作品素材の管理や納品に関わる業務、契約書作成や売上報告に関わる事務作業などもありますが、主となる業務は前述の営業及び金額交渉となります。放送権は配信権とはあまり変わりません。商品化権は詳しくないのですが、商材が映像そのものから、グッズになる程度で全体の流れは変わらないはずです。
また、社内で関わりが多いのは作品のプロデューサーです。作品の制作状況や作品展開について情報共有を受けながら営業業務を進めていきます。また、売上を立てる職種なので経理との連携や、作品の権利に関わるので契約などを管理する部署との連携も少なくないです。
ライセンス営業についての注意点の一つは、配信や放送、グッズにおいて、どういう作品が売れているのかという解像度の高さです。アニメの配信に関して言えば、不評がちな異世界アニメや次いでラブコメが圧倒的な人気を誇っています。逆にSNSで高い話題性を誇る「ラブライブ」「BanG Dream」「ガールズバンドクライ」といったガールズバンドものやアイドルものや、オリジナルアニメ全般、根強いコアファンが多い日常系アニメや百合アニメは配信という観点では不人気ジャンルとなります。そのため、就活で配信のライセンス営業の話をする際に、前述のジャンル作品について話題に挙げる際は注意が必要です。とはいえ、逆に商品化の話となれば、根強いファンが多いガールズバンドものアイドルもの、日常系、百合系は人気のジャンルとなります。
配信での人気作品については、アニメも実写も共に、配信サイトのランキングを定期的に見ているとどういった作品が人気なのかということはすぐに分かるはずです。実写の場合は、もちろん劇場上映時の興行収入も大事な要素になります。グッズについては、アニメの場合はどれくらいの商品数が展開されているかや、POPUP SHOPの開催頻度などが人気の指標になるかと思います。海外については、アニメでいえば、MyAnimeListというサイトのMember数を見れば主に北米での作品人気度が分かります。とはいえ、国内配信と人気ジャンルはさほど変わりません。
ともかく、ファン的な作品の人気と、各分野における作品の人気というのは若干異なるという点に注意が必要です。また、収益的な観点では国内配信や海外販売の売上と比べるとグッズの売上は非常に小さいため、作品に関して語る際は配信人気・海外人気が高いジャンルに重点を置くべきかもしれません。
ライセンス営業志望の就活
もちろん会社の方針によるところではありますが、初配属がライセンス営業になることが多いと思われる中で、志望部署もライセンス営業と話すのが良いのかどうかとなると思います。ここについては、必ずしもそうでないかと思います。あくまでもキャリアのファーストステップと目指すとことは別ですし、私も宣伝志望と話していました。ただし、ESや面接で「〇年後どうなっていたい?」と聞かれた際に、「まずはライセンス営業を経験することで、商流やお金の流れについての知見を深めて、プロデューサーとして活躍するための経験値を貯めたいです」などと回答できると面接官ウケは非常に良いと思います。
また、繰り返しになりますが、自分の好きな作品などでは配信人気が高いジャンルの作品について重点的に語る方が安全策かと思います。もちろん熱量高く語れる作品も大事ですし「するな」とは言いませんが、ビジネス的な観点でも語れるという姿をアピールすることはもっと大事です。
私自身、アート系作品の話を面接でした際に「うちは慈善活動でやってるんじゃないんだよねぇ」と面接官に言われて、咄嗟に「もちろん、御社の異世界やラブコメ作品も見ております」と補足するようなことがあったので、話題にする作品やそのジャンルのバランスには注意を払うべきです。そこは志望する会社がどういったビジネスモデルを軸としているのかという点とすり合わせる必要があるので、逆質問でそのあたりを質問するのも良いかもしれません。とはいえ、多くの製作会社では、映画の場合は興行収入と国内配信、アニメの場合は国内配信と海外が売上の大部分を占めています。
配給営業・劇場営業
あまり詳しくないのですが、どういった職種かというと、「うちで作った映画を御社の映画館で上映しませんか?」という営業活動を行っています。また、興行収入のうち配給会社の取り分となる配給収入の料率の交渉も行っているようです。
狙い目の会社
以下、全てアニメ志望を念頭に置いた記述になります。
中堅映画配給会社
アニメ志望の場合は、ずばり中堅の映画配給会社が狙い目です。この手の会社もTVアニメに注力している会社が少なくない中で、業界志望者の目線としてはアニメ事業をやっているという認識が薄いのではないでしょうか。そのため、アニメ業界志望者が殺到するレコード会社やTV局と比べるとアニメ志望者の中での競争は少ないはずです。また、この手の会社もアニメの国内配信と海外で売上を立てています。
制作会社・アニメスタジオ
アニメ志望で海外系の事業部を狙えるだけの語学運用能力などがある場合は、トムス・エンタテインメントやMAPPA、ぴえろといった制作会社かつ製作会社も良いのではと思います。その手の会社で製作系の職種は海外事業の応募しかないことが多いと思います。もちろん、製作専門の会社の方が待遇が良い場合が多いとは思われますが、業界に入るチャンスとして見逃すべきではないところだと思います。
狙い目でない会社
広告代理店
広告代理店は、アニメの製作機能はほとんどないかと思われます。あるにしても、中途採用で人員を固めているのではと思います。アニメのクレジットで広告代理店を見かけることは多いのですが、それは放送枠の担当として関わっているのであって、やはり広告代理店的な領域なので、「こういう作品を作りたい!こういう宣伝をしたい!」という話は聞いてすらもらえません。
テレビ局
テレビ局もやや怪しいです。キー局各社は放送収益としてアニメに注力していますし、関西の準キー局もキー局より以前から積極的に製作委員会に参加してきた局があります。しかし、ライセンス営業含めて新卒が関連部署に初配属しない方針の局があると聞きます。もちろん、局によるとは思いますが、アニメ事業の体制作り中というだけに中途採用に傾倒している可能性はあるかもしれません。とはいえ、数年かけて社内異動を狙えばいい話でもあると思います。
ただし、テレ東だけはアニメ事業の歴史や注力ぶりからしても、話は別なような気もします。また、キー局でもFODやHuluなど配信サイトの作品調達・買付担当としてアニメに関わるというやり方もあるかもしれないです。そこも新卒で関われるのかはわからないですが…。
質問
何かご質問がある方は、Contactページのお問い合わせフォームやXなどからご連絡を頂ければ、ご回答できるかもしれません。(100%回答できるとは言い切れずすいません…)
Tags: