「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「ジャッリカットゥ 牛の怒り」─狂気で混沌の牛追い─ 感想と考察
Publish date: Aug 4, 2021
ここでは思いっきりネタバレをするけれど、そもそもネタバレするような内容もないし、ただこの狂気の混沌の勢いを楽しむに尽きる映画だった。
肉屋の水牛が逃げ出したのでみんなで捕まえる話、基本的にそれ以上でもそれ以下でもない。そのはずなのに、何故か村人たち同士が個々人の因縁だったりで水牛そっちのけで喧嘩し始めたり、別の村から荒くれ者が乱入してきたり一切合切で混沌。
水牛を捕まえようにもみんなやる気と勢いだけはあるんだけど、ろくに手立ても考えてないようで一斉に水牛を取り囲んでは水牛の突進から一斉に退散して、取り囲んで逃げては…の繰り返し。最終的にはボロボロになった水牛は沈黙するのだが、その肉を得ようと人々が我先にと群がり、人の山の中から事の発端の肉屋が叫び声を上げて幕切れ。
本当に内容はない。だけどそこは別にどうでもいいことで、数十人や数百人の男たちがジャングルを疾走し入り乱れる様相やささやき声や叫び声、環境音の重なった野性を感じさせる音楽は理性を奪い、劇中の野獣と化した群衆のように誘おうとするものだった。インド映画はあまり見たことないが、この映画の雰囲気はとても個性的で乱雑なアーティスティックさを持つ混沌であった。
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