「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「星屑テレパス」─海果の思いは、宙へ広がるビッグバン─ 感想と考察 1~6話
第1話「彗星エンカウント」
人とのコミュニケーションが苦手な小ノ星海果は、こんな自分でもフツーでいられる場所と友だちを求めていた。それが宇宙であり、宇宙人。
そんなことを言われてしまうと、この地球上にはただの一人も心を開ける相手がいないのかと海果の感じる孤独さに心がツンとさえしてしまう。だけど、それもこれも今まで一人ぼっちの星の下に生きてきたからこそ、そんな近視眼的な孤独感と疎外感に陥ってしまっていたのかもしれないという気もするようだった。
とはいえ、そんな海果の前に突然現れた明内ユウと名乗る宇宙人。海果にとって、ユウはフツーじゃない私を受け入れてくれるフツーじゃない人であって、だからフツーの人とは違って、海果も初めて誰かに心を開くことができたのだと思う。
そして、その象徴が心が明け透けに伝わる「おでこパシー」であり、屋上での勇気を振り絞った自己紹介なんだと思う。それに、今まで誰にも自分のことを話すことができなかった海果が、ユウには「ロケットで宇宙に行きたい!」という夢まで熱を込めて打ち明けた場面には、なんだか急に心の中に温かいものが流れ込んでくるような胸の熱さを感じてしまった。
そしたら、ユウの方も海果に自分のことを話してくれて、「宇宙に帰るためにロケットを作りたいんだ」と話してくれた。そうやって二人の夢が二人一つになった瞬間には、まるでこの広い宇宙の中でら小さな点と点が交わり合うような果てしない運命を感じるようで、なんだか涙さえ滲んできてしまった。
第2話「夕焼ロケット」
「ユウの灯台基地のことがクラスメイトの遥乃にもバレてしまいそうになる!!」
それは海果にとって、ユウが宇宙人ということまでバレて大変なことになってしまう!という重大な問題で慌てふためく。そんなユウに関わることを「秘密」と捉える海果の様子は、まさに海果の内向きさの写し鏡のように見えていた。
ユウのことはようやくできた大事な友だちで、遥乃のことはなかなか心を開けないクラスメイト。海果が遥乃の声掛けにもなかなかちゃんと答えられないのも、そういうことを意味しているように感じるものだった。
だけど、遥乃の「あの灯台はお気に入りの場所だし、ユウのことを宇宙人だと信じるよ!」という言葉が、海果にとっての遥乃像を変えた。
それは海果と同じように、遥乃も灯台のこととユウのことを思っているよということで、それが海果が遥乃へ心を開くきっかけになった。それはまさに、海果とユウの二人だけの関係が、遥乃を加えた三人だけの関係になった瞬間のように見えていた。
一方で、「ペットボトルロケットで本当に宇宙まで行けちゃったら、どうしようと思ってた…!」というユウは、外向きな彼女の内向きな部分のように感じられるものだった。
そして、それは今のユウの心は遠い遠い宇宙じゃなくて、この地球のこの海果と遥乃との三人の中にあるんだ!ということを示しているように見えていた。それに外向きなユウだからこそ、色んなクラスメイトとよくコミュニケーションするけれど、でもその中でもこの三人の友情は特別で、確かなものだということを強く印象付けているようでもあった。
第3話「爆薬メカニック」
「メカニックが足りない〜!」ということで、クラスメイトの雷門瞬のもとを訪ねることになった海果たち。
中学の時にも瞬と同じクラスメイトだった海果にとって、一匹狼な彼女は一人で何でもできてしまう憧れだった。しかし、実際に瞬に会った際に、海果はいざ自分から話しかけられず、瞬から「自分のことくらい自分で話せよ」と苛立たせてしまう。
そんな海果の瞬との二つの接点は、海果の足りないピースをありありと示しているように見えていた。海果はここまでユウと遥乃の二人と友だちになれたけど、共にどこか受け身的な成り行きであり、海果が自分から自分の一歩を踏み出したとは言い切れないものだった。
それに、「ロケット開発の知識と技術が自分にはないからメカニック担当が欲しい!」という中で、そのメカニック集めすら人任せでは海果の筋もどこか通らない。自分の夢を叶えるために、必ずしも一人で全てをやり切ることはないけれど、だけど最低限の自分の手で果たさなければいけないことはあるのだと思う。
もちろん、海果もそうしなきゃいけないことは分かっているし、たった一人でロボット作りに没頭する瞬への憧れもそれが理由なのだと思う。だから、海果は勇気を振り絞って、自分の言葉で自分の夢を瞬に向けて伝える。
そんな「居場所を見つけたいから、私は宇宙に行きたくて、ロケットが作りたい…!」という言葉は、少しずつ頑なな瞬を動かす。そして、遠い果ての夢を見て、夢中になる海果に、瞬も自分と同じだとシンパシーを感じていたように見えていた。
第4話「決戦シーサイド」
そして、いざ決戦の時。
海果たちのペットボトルロケットは、その火薬発射ロケットには及ばなかったけれど、それでも手動発射時の一時は瞬のロケットを超えていた。だから、瞬には海果たちの本気度合いが確かに伝わっていた。
それに、海果が中学生の頃から瞬に話したかったという彼女のゴーグルのカッコよさというのは、「そんなこと…」と面を食らうものだった。でも、それは目先の技術だけ貸してくれ!という使いっぱしりのような関係じゃなくて、瞬という一人の存在と向き合いたいという表明を意味しているようでもあった。だから、海果の心意気というのは、少し捻くれたとこのある瞬にも真正面から届いていたし、「くだらねぇよな、本当」と嬉しそうににやける瞬だったのだと思う。
第5話「無限ドリーマー」
この4人の活動を部活としてカタチにすることに。そして、それは「居場所が欲しいの」という海果を願いを一つ叶えるものだった。さらに 、勝手にその部長の役に海果を据えた瞬というのは、彼女の背中を押しているように見えていたし、そこではいつの間にか瞬も海果の居場所を作る輪の一員になっていた。
そして、宿泊合宿のワークショップ。その中では、他のクラスメイトとも関わらなくちゃいけなくて、海果にとっては慄いてしまうことだけど、ユウがいるからなんとか馴染むこともできていた。そして、それはだんだんと「楽しい」宿泊合宿の時として感じられるようになっていっていた。
それは、まさにユウが海果にくれたものを象徴しているようだった。瞬のことも、このクラスメイトたちのとのことも、海果にとっての全部がユウと出会ったことがきっかけ。
だからこそ、改めて海果は「宇宙に行こう!」と最初の思いを確かめた。ユウと出会う前の海果にとっては、それこそ遠い夢のようだった友達作りや楽しい学校生活をユウと共に叶えることができた。そして、今度はそのお返しとしてユウの夢・「宇宙に行きたい!」ということを叶えるという决意を固くしたように見えていた。
第6話「乾杯イニシエーション」
「今日から私はロケット研究部の部長です!」と息巻く海果だけど、実際の部の承認は認められず、なんとか同好会という形に落ち着くことに…。しかも、部費も出ない。
とはいえ、海果に落胆の表情は見えない。それは、「まずはみんなでやってみたい!!」という気持ちがあって、それを同好会というカタチにできただけでも海果にとっては大きなコトだったのだと思う。だから、たとえ部じゃなくても、みんなの間の結束や絆を目に見えるモノできただけで、海果にとっては大きな成果であり、大きな原動力になっていたように見えていた。
そんなロケット研究同好会は、火薬式のモデルロケットの大会を見学しに行くことに。そして、その先で科学技術高校の秋月彗と偶然の再会。それは海果にとって、ロケットを通した繋がりの輪の広がりと、同時にもたらされる視野の広がりを改めて認識させられるシーンだった。
そして、その一番の象徴が、その彗が大会の代表スピーチを行う場面。部長として堂々とみんなの前で挨拶する姿は、海果がなりたい憧れの姿そのもののように見えていた。そして、そんな憧れはさらに海果たちをロケットに駆り立てる原動力となっていく予感を感じさせるものだった。
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