「物語の読解、演出の解体、世界観の抽象化」
「熱帯魚は雪に焦がれる 7巻」感想と考察
Publish date: Sep 28, 2020
すれ違っていた小夏と小雪の間の溝が解消できたのが嬉しくもあり、またそのわだかまりの裏にあった2人が互いに互いを大切に想う気持ちや2人が抱える寂しさの重さに思わず涙ぐんでしまった。寂しさを埋めてくれた優しさや安心へ募る想いはこんなにも、まるで恋心のように2人をいじらしく切ないものにしてしまうのかと思った。
小夏の父や小雪の父が娘たちの力になってあげたいと思うけれども、何もできないというもどかしさに頭を抱えてしまっていた姿は、大人がただの脆さを伴った少女を導くだけの役柄でなく、みんながみんなそれぞれの大切な人を想い、時に悩むというものでよかった。そして、小夏や小雪の父のせめてもの助力として2人なら壁を乗り越えられると信じて見届ける覚悟の勇気はとても温かかった。
2人の溝はどうにかできても小雪はいずれ卒業してしまうという必然の現実を前にして、小雪との別れの先、小夏が寂しさから逃げずに向き合って受け入れた先に何を思うのか、次巻に期待が募った。そして、読み手にも小夏の父親の様に彼女を見守ることしかできない不安やもどかしさがあり、その行く末を見届ける勇気が必要だけど小夏が踏み出した勇気と前進には応援したくなった。
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